
『子どものウソ』
今月は“子どものウソ”についての話しです。
大人も含めウソをついたこのない人はまずいません。決して良いことではありませんが、善意の嘘などが必要な時もあります。同じように子どもがウソをつくのも、ある意味自然な姿です。しかし、心配なのは、“ウソが非常に多く、かたくなに本当のことを言わない子”です。大人になったとき大きな問題が生じる可能性があります。
佐々木先生はこの様に言われました。
確かに嘘は悪いことです。もし、嘘を野放しにしたら世の中は無茶苦茶なってしまいます。しかし、知恵がつけば、善意の嘘も含めて嘘をつきますし、それは人間が根源的に持ち合わせている感情です。そして、子どもも嘘をつきます。
なぜ嘘をつくかと言いますと“自分が傷つきたくない”からです。すなわち自尊心、誇り、プライド、そう言うものが芽生えてきますと、その結果、逆に自分が傷つく感情も出てくるのです。けれども、それは知恵であり、自主性、主体性が育ってきたことになるわけです。・・・
普段から、自尊心を傷つけない育て方をすれば、ウソは少なくなります。
しつけをするときに、無理矢理やらせて、それが習慣となり、しつけになることはありません。しつけというのは何度も触れたように、子どもの自尊心を傷つけずに、親や社会が取り決めて価値観に基ずく行動を、子どもが主体的に取り入れることが出来るかどうかでしたね。
従って、自尊心を傷つけながら無理に教え込んでいけば、多くは非行化しやすく、反抗、攻撃、怒り、欲求不満などを積み重なって、その場を逃れていくことになります。そして仕返ししてやろうという感情が意識しなくても潜在的に出てきます。
小さいときの怒りが積み重なって、大人になったときに大きなウソつくようになることはあり得ます。ウソと泥棒や放火は心理的にほとんど同じです。理屈ではなく自分の中の欲求不満でしてしまうのです。
自尊心を傷つけられる様な強い叱られ方や厳しいしつけを受けている子は、ウソが多くなり、かたくなに本当のことを言わなくなります。これ以上、自分が傷つきたくないのです・・・。
そして、更に心配なことは、その怒りや欲求不満の矛先を、自分より弱い者に向けてしまうということです。
かつて、河川敷のホームレスの老婆を少年達が襲撃し殺害した事件がありました。
警察の取り調べで、なぜ老婆を狙ったかと聞かれると「自分が絶対に勝てる相手だから」と答えたそうです。なんという悲しい返答、弱者を標的にしたのです・・・。
家庭内で、親と子の体力や力関係が逆転すれば、親が標的に、これが家庭内暴力です。
佐々木先生はこの様にまとめています。
要するに、子どもにとって大事なのは、要求がどの様に叶えられているか、自分が望むように愛されているかということです。ところが親は、自分が思うように愛しても、子どもが望むように愛しているかという点検や反省を怠りがちです。
そのことが、子どものウソを中心に様々な問題が起こる原因となるのです。
子どもの要求がどこまで叶えられているか?
子どもの望むような愛し方が出来ているか?
このことは、子どものウソに限らず、その子の人生を大きく左右することをあらためて心にとめておきたいものです。
2021.7.3 山田 昇
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