佐々木先生“言葉の森”NO.131『依存と反抗、そして、母性と父性』
『依存と反抗は、一見、全く反対の行動のように見えますが、実はどちらも“甘え”です。その“甘え”である“依存”と“反抗”を充分に受容される経験が少なければ、その少ない程度に応じて、大人になった時に自律的な生活が出来なくなります。』
佐々木正美先生の最も有名な言葉のひとつに「子どもは“依存”と“反抗”を繰り返して自律していく」という言葉があります。
私は20代の頃からこの言葉を耳にたこができるほど聞いていましたが、卒園生や巣立っていく我が子を見ていて,この言葉の重要性を痛感しています。佐々木先生はこの様に言われました。
「依存と反抗は、一見、全く反対の行動のように見えますが、実はどちらも“甘え”です。その“甘え”である“依存”と“反抗”を充分に受容される経験が少なければ、その少ない程度に応じて、大人になった時に自律的な生活が出来なくなります。
そして、親に充分な依存や反抗が出来ないまま、やがて親になれば、上手な子育てが出来ません。子ども頃に、親に対して、特にお母さんに対して、充分に“依存”と“反抗”が出来たかが、その人の人生を左右すると言っても過言ではありません。」
そして、もう一つ大切な事は、その時期、順序です。「“依存”や“反抗”を容認する」ということは、「母性的」な関わりです。この「母性的なものを、先に与えられなければならない」と佐々木先生は言われます。ちなみに、母性性とは、一般的に「包み込む」「安らぎ」「受け止める」「許す」等を意味し、父性性とは「規律」「義務」「忍耐」「鍛える」等を意味します。
そして、これらの母性性や父性性は、男女性別関係なく、どんな人の中にも、各々の割合で存在します。佐々木先生は、この様に言われます。
「よく「子どもには母性と父性をバランスよく与えることが大事だ」と言われますが、もっと大切なことは、順序良く与えなくてはいけないということです。
自分自身の何十年もの臨床体験の中で、はっきりとわかったと感じています。父性と母性は「バランス」ではなくて、「順序」が肝心だということ。どちらを先に与えるべきかと言えば、言うまでもなく母性、母性性の方です。先に「こうしてはいけない」「こうすべきだ」ではなく、子どものありのまま、すべて容認する母性性をまず与えなければいけません。
母性的なものをたくさん与えられると、父性的なものは与えやすくなります。喜びを分かち合う力が育っていないと悲しみを分かち合う力は育たない、といいましたが、これと似ています。」
幼い時に自分のワガママを沢山きいてもらったり、自分の要求を沢山受け止めてもらったり等、母性的なものを沢山与えられた子ほど、やがて集団生活に入った時に、今度は自分を周囲に合わせること(規範を守る=父性性)が出来る様になります。ですから、逆に言えば、先に母性が豊かに与えられれば、父性的なものはそれ程必要としなくなるのです。これは、「基本的信頼感」が豊かに育った子ほど、「自立性」が育ち易かったのとよく似ています。やはり、“順序”が決定的に大切であるということです。
また、「幼い時にわがままを聞いてもらうことが大切」と言うと「昔の親は、もっと厳しかった」と言う大人がいます。確かに、戦後の日本は、そうだったのかもしれません。しかし、逆に、昔は、もっと社会全般に“母性的なもの”があったのも事実です。
例えば、親に叱られた時の逃げ場である祖父母がそばにいたとか、外に閉め出されたら「しばらく家においで・・・」と優しくしてくれる隣のおばさんがいたとか・・・。この様な“社会の中の母性的なもの”は、今日の子ども達には、ほとんど保証されていないのが事実です。
ですから現代では、その分を差し引いて、幼い時期に我が子を意識的に“母性的なもの”で包み込む必要があるのだと思うのです。
繰り返しますが、母性的なものは、男性にも女性にも、それぞれの比率で存在します。しかし、幼児期は、お母さんといる時間が長いことを考えると、お母さんが母性的であった方が、子どもは健やかに育ちます。
ではお父さんはどうあるべきか。佐々木先生はこう言われます。お母さんが母性を発揮しやすいように『お母さんを幸せにすること』だそうです!虹のお父さんたち、共にがんばりましょう!
2019.7.12 山田昇
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